伝染病の解説
インフルエンザ
病原体 | : | インフルエンザウイルス。主にA、B型がある。 |
潜伏期間 | : | 1~2日 |
感染経路 | : | 患者の鼻腔、咽頭、気道粘膜の分泌物からの飛沫感染による。毎年12月頃から翌年3月頃にかけて流行する。A型は大流行しやすいが、B型は局地的流行にとどまることが多い。流行の期間は比較的短く、地域的には発生から3週間以内に流行のピークに達し、3~4週間で終焉するが、最近は流行パターンが変化しやすく毎年その変遷に注意が必要である。 |
治療 | : | 対症療法が主であるがザナミビル、オセルタミビル、ラニナミビル、ペラミビル等のノイラミニターゼ阻害剤が早期に使用されると有効であり合併症も軽減される。二次的な細菌感染による肺炎、気管支炎、中耳炎などがあるときは抗生剤を使用する。重症肺炎、脳症が発症した時には早期ステロイド療法が時に有効となる。また解熱剤はアセトアミノフェンが適切で、ジクロフェナクNaやメフェナム酸は使用しないことになっている。 |
予防 | : | インフルエンザワクチンの接種が有効である。また潜伏期間が短いので、流行時の臨時休園も有効で、特に流行初期は3日間くらいの休園期間が必要。 |
登園基準 | : | 発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後、3日を経過するまで出席停止とする。ただし、病状により伝染のおそれがないと認められたときはこの限りではない。 |
百日咳
病原体 | : | グラム陰性桿菌である百日咳菌 |
潜伏期間 | : | 6~15日 |
感染経路 | : | 飛沫感染である。1年を通じて存在するが春から夏にかけて多い。DPTワクチンの免疫が失われている成人での流行が市中に増えているので注意が必要である。 |
治療 | : | 抗生剤を早期に用いれば菌体毒素の増加を防ぎ症状を軽減することができる。他は対症療法であるが、場合により鎮痙剤を用いることもある。 |
予防 | : | 定期予防接種がある。乳児期での罹患は症状が重く合併症も多いので、乳児の早期(生後3か月以後)からの予防接種が勧められている。 |
登園基準 | : | 特有な咳が消失するまで、又は5日間の適正な抗菌性物質製剤による治療が終了するまで出席停止とする。ただし、病状により伝染のおそれがないと認められたときはこの限りではない。 |
麻疹
病原体 | : | 麻疹ウイルス |
潜伏期間 | : | 10~12日 |
感染期間 | : | 飛沫感染である。発疹出現前のカタル期に最も感染力が強い。春から夏にかけてが流行期であったが、最近は年間を通じて発生している。 |
治療 | : | 対症療法が中心で、細菌合併症があれば抗生剤を使用する。 |
予防 | : | 1歳児早期での l 期及び入学前1年間での ll 期のMRワクチン2回接種が極めて有効で、定期接種となっている。自然罹患がなく予防接種も受けていない園児にはワクチン接種を勧めるべきである。 |
登園基準 | : | 発疹に伴なう発熱が解熱した後3日を経過するまで出席停止とする。ただし、病状により伝染のおそれがないと認められたときはこの限りではない。(なお合併症の中で最も警戒すべき脳炎は、解熱した後再び高熱をもって発病することがある。) |
風疹
病原体 | : | 風疹ウイルス |
潜伏期間 | : | 14~21日 |
感染経路 | : | 飛沫感染である。春から夏にかけて多いが、秋から冬にかけてみられることもある。 |
治療 | : | 対症療法が中心である。 |
予防 | : | 定期予防接種(MRワクチン:1歳児早期の l 期、及び入学前1年間での ll 期)がある。 |
登園基準 | : | 紅斑性の発疹が消失するまで出席停止とする。なお、まれに色素沈着することがあるが出席停止の必要はない。 |
流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)
病原体 | : | ムンプスウイルス |
潜伏期間 | : | 14~24日 |
感染経路 | : | 飛沫感染である。接触の度合いの大きい幼稚園、保育所、小学校での流行が多く、また、春から夏にかけて多い。 |
治療 | : | 対症療法が中心である。 |
予防 | : | 生ワクチンが実用化されているが任意接種である。最近ワクチンの二次性免疫不全例が多いので既接種児についても注意が必要である。副反応としての無菌性髄膜炎の合併が20,000~30,000接種に1例程度見いだされる。 |
登園基準 | : | 耳下腺、顎下腺又は舌下腺の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ、全身状態が良好になるまで出席停止とする。 |
水痘(みずぼうそう)
病原体 | : | 水痘・帯状疱疹ウイルス。水痘治癒後ウイルスは肋間神経などの神経節に潜伏し、免疫状態が低下したときに帯状疱疹として再発症する事がある。 |
潜伏期間 | : | 11~20日(14日程度が多い) |
感染経路 | : | 主として飛沫感染であるが、膿・水泡中にはウイルスがいるので接触感染もする。帯状疱疹からは飛沫感染はしないが、直接接触感染はする。痂皮となれば感染源とはならない。 |
治療 | : | 対症療法が中心であるが、発症早期の抗ヘルペスウイルス剤(アシクロビルなど)が有効であり、乳児、免疫不全児などには必須の治療薬とされている。細菌による二次感染には抗生剤を使用する。 |
予防 | : | 任意接種の水痘生ワクチンがある。ワクチン接種しても軽く罹患することが20%程度にある。 |
登園基準 | : | すべての発疹が痂皮化するまで出席停止とする。ただし、病状により伝染のおそれがないと認められたときはこの限りではない。 |
帯状疱疹
病原体 | : | 知覚神経節に潜伏した水痘・帯状疱疹ウイルスが、免疫状態の低下や疲労時に帯状疱疹として再発症。 |
潜伏期間 | : | 不定 |
感染経路 | : | 主に接触感染。 |
治療 | : | 抗ヘルペスウイルス剤(アシクロビルなど) |
予防 | : | 任意接種の水痘生ワクチンがある。 |
登園基準 | : | すべての発疹が痂皮化するまで出席停止とする。ただし、病状により伝染のおそれがないと認められたときはこの限りではない。 |
咽頭結膜熱
病原体 | : | アデノウイルス3型が主であるが、その他の型も病因となる。 |
潜伏期間 | : | 5~6日 |
治療 | : | 対症療法が中心で眼科的治療も必要である。 |
予防 | : | 手洗い、うがい、水泳前後のシャワーの励行、目の洗浄など一般的な予防方法の励行が大切である。プールを一時的に閉鎖する必要のあることもある。 |
登園基準 | : | 主要症状が消退した後2日を経過するまで登園停止とする。ただし、病状により伝染のおそれがないと認められたときはこの限りではない。 |
腸管出血性大腸菌感染症
病原体 | : | 腸管出血性大腸菌(ベロ毒素産生大腸菌)。熱に弱いが、低温条件には強く水の中では長期間生存する。少量の菌の感染でも腸管内で増殖後に発症するので(感染型・生体内毒素型)、食中毒菌よりも赤痢などと同様の発症様式である。 |
潜伏期間 | : | 4~8日 |
感染経路 | : | 主として飲食物からの経口感染である。少ない菌量(100個程度)でも感染する。夏期に多い。 |
治療 | : | 下痢、腹痛、脱水に対しては補液など対症療法を、また止痢剤の使用は毒素の排泄を妨げる恐れがあるので控えること、抗菌剤使用の可否については議論があるが、発症早期には抗菌剤の経口投与が勧められている。 |
予防 | : | 手洗いの励行、消毒(トイレ等)、食品の加熱及び良く洗うことの三点である。二次感染にも注意が必要である。 |
登園基準 | : | 有症状者の場合には、主治医によって伝染のおそれがないと認められるまで登園停止とする。無症状病原体保有者の場合には出席停止の必要はなく、手洗いの励行等の一般的な予防方法の励行で二次感染は防止できる。 |
流行性角結膜炎
病原体 | : | 主にアデノウイルス8型 |
潜伏期間 | : | 7日以上 |
感染経路 | : | プール水、手指、タオルなどを介して接触感染する。 |
治療 | : | 対症療法 |
予防 | : | 手洗い、タオル等眼に触れるものの共用をしないことなどの注意が大切である。保育園、幼稚園等では、患者が発生した場合、ドアの取っ手等の消毒も必要である。プールの一時的な閉鎖を必要とすることもある。 |
登園基準 | : | 眼症状が軽減してからも感染力の残る場合があり、主治医により伝染のおそれがないと認められるまで登園停止とする。 |
急性出血性結膜炎
病原体 | : | 主としてエンテロウイルス70型 |
潜伏期間 | : | 24~36時間 |
感染経路 | : | プール水、手ぬぐい、タオルなどを介して接触感染する。感染力が非常に強い。 |
治療 | : | 対症療法 |
予防 | : | 眼脂、分泌物に触れない注意が必要で、手洗いの励行、洗面具・タオルなどの共用をしないことなどの注意が大切である。 |
登園基準 | : | 眼症状が軽減してからも感染力が残る場合がある。主治医により伝染の恐れがないと認められるまで登園停止とする。 |
溶連菌感染症
病原体 | : | A群β溶血性連レンサ球菌 |
潜伏期間 | : | 一般に2~4日 猩紅熱は1~7日 |
感染経路 | : | 飛沫感染である。飲食物による経口感染の報告もある。 |
治療 | : | ペニシリン製剤が第一選択である。上気道炎、猩紅熱の場合、咽頭培養により溶連菌を確認してペニシリン系、セフェム系などの抗菌剤を菌が消失するまで投与する。最近は耐性株による除菌困難例が増えており、抗生剤の選択、治療期間の設定に工夫が必要となる。 |
予防 | : | 特に有効な方法はない。手洗い、うがいなどの一般的な予防方法の励行のほか、必要があれば早期に細菌培養・同定を行い、菌が陰性化するまでペニシリン製剤による治療を行う。 |
登園基準 | : | 適切な抗生剤治療が行われていれば、ほとんどの場合24時間以内に他人への伝染を防げる程度に病原菌を抑制できるので、抗生剤治療開始後24時間を経て全身状態がよければ、登園は可能である。 |
手足口病
病原体 | : | 主としてコクサッキーウイルスA16型とエンテロウイルス71型である。 |
潜伏期間 | : | 2~7日 |
感染経路 | : | 主として飛沫感染である。ウイルスは糞便中に排泄されるので経口感染も起こり得る。 |
治療 | : | 対症療法である。 |
予防 | : | 一般的な予防の心がけしかない。 |
登園基準 | : | 急性期から回復後も糞便から2~4週間にわたってウイルスは排出されることがあるが、糞便のみのウイルス排出者は、感染力は強くないと判断されるので、全身症状の安定した者については、一般的な予防を励行していれば登園は可能である。 |
ヘルパンギーナ
病原体 | : | 主としてコクサッキーA群ウイルスであり、他のエンテロウイルスによっても起こる。 |
潜伏期間 | : | 2~7日 |
感染経路 | : | 飛沫感染が主であるが、糞便中にもウイルスが排出されるので経口感染も起こり得る。糞便中へのウイルス排泄は発症後1週間以上認められるが、感染源となる程度の量の咽頭からのウイルス排泄は発症後2~3日とされている。 |
治療 | : | 対症療法である。口内疹の痛みには鎮痛剤を加えた外用薬を使用する。 |
登園基準 | : | 急性期から回復後も、糞便から2~4週間にわたって、ウイルスが検出されることがあるが、糞便のみのウイルス排泄者は、感染力は強くないと判断されるので、全身状態が安定した者に対しては、一般的な予防をとって登園可能である。 |
RSウイルス感染症
病原体 | : | RSウイルス |
潜伏期間 | : | 2~8日 |
感染経路 | : | 接触感染、飛沫感染 |
治療 | : | 対症療法 |
予防 | : | ハイリスク児(早産児、先天性心疾患、慢性肺疾患)にはモノクロナール抗体(シナジス)を流行期に定期的に筋注することで、発症予防と軽症化を図る。 |
登園基準 | : | 咳などの症状が安定し、全身状態が良いこと。 |
伝染性紅班(りんご病)
病原体 | : | ヒトパルボウイルス(HPV)B19 |
潜伏期間 | : | 感染後17~18日で特有の発疹を認める。ウイルスの排泄期間は発疹の出現する1~2週間前の数日間といわれる。 |
感染経路 | : | 主として飛沫感染である。ウイルス血症の期間の輸血による感染の報告もある。 |
治療 | : | 対症療法である。通常は治療を必要としない。 |
予防 | : | 感染力は弱く、発疹期にはウイルスの排泄はないと考えられるので、飛沫感症としての一般的な予防方法が大切である。流行時には、担当保育士、園の訪問者などに妊婦及び妊娠適齢期の女性がいれば、患児との接触を避けるよう配慮が必要である。 |
登園基準 | : | 発疹期には感染力はほとんど消失していると考えられるので、発疹のみで全身状態のよい者は登園可能と考えられる。ただし、急性期には症状の変化に注意しておく必要がある。 |
マイコプラズマ感染症
病原体 | : | マイコプラズマ科に属する細菌 |
潜伏期間 | : | 14日~21日週間 |
感染経路 | : | 飛沫感染である。感染力は弱いが非定型肺炎や中耳炎を発症し、家族内感染、再感染が多い。毎年夏から秋にかけて流行するが、およそ4年ごとに流行のピークがくる。病原体の排泄期間は4~8週間とされる。 |
治療 | : | 抗生剤として、マクロライド系(エリスロマイシンなど)とテトラサイクリン系(ミノサイクリンなど)が有効であるが、テトラサイクリン系の使用は重症の年長児以上に限られるべきである。 |
予防 | : | うがいの励行、マスクの使用など。飛沫感染に対する予防方法の励行。 |
登園基準 | : | 症状が改善し、全身状態の良い者は登園可能である。 |
流行性嘔吐下痢症
病原体 | : | 主としてロタウイルス、ノロウイルス、時に腸管アデノウイルスなどである。ロタウイルス、アデノウイルスは迅速診断法のキットが実用化され早期診断に用いられている。 |
潜伏期間 | : | 1~3日 |
感染経路 | : | 主として経口感染であるが、飛沫感染も重要と考えられる。貝などの食品を介しての感染例も知られている。ロタウイルス、ノロウイルスは冬季に多く、アデノウイルスは年間を通じて発生する。 |
治療 | : | 対症療法である。特に脱水症に対する治療が重要である。痙攣の前兆が疑われれば適切な抗痙攣剤の早期投与も時に必要となる。 |
予防 | : | 一般的な予防方法を励行する。2011年11月、ロタウイルスの経口生ワクチンが任意予防接種として開始された。 |
登園基準 | : | ウイルス性腸管感染症は、症状のある間が主なウイルスの排泄期間であるため、重い消化器症状から回復した後、全身状態のよい者は登園可能である。 |
伝染性軟属腫(水いぼ)
病原体 | : | 伝染性軟属腫ウイルス |
感染経路 | : | 接触による直接感染のほか、タオルやビート板による間接感染。 |
治療 | : | 特にはないが、特殊ピンセットで摘み取るなどの直接的治療もある。 |
予防 | : | 多数の発疹のある者については、接触感染をするので、プールでの浮き輪、タオル等の共用は避ける。水を介しての感染はまずない。 |
登園基準 | : | 合併症がなければ登園可能であるが、病巣部位の他児との直接皮膚接触は避ける。 |
伝染性膿痂疹(とびひ)
病原体 | : | 主として黄色ブドウ球菌ファージ lll 群コアグラーゼV型と溶血性レンサ球菌。 |
潜伏期間 | : | 2~10日(感染菌量や傷の状況によって変わる) |
感染経路 | : | 接触感染である。痂皮にも感染性が残っている。夏期に多い。 |
治療 | : | 皮膚の清潔である。グラム陽性菌に対して抗菌剤(ペニシリン、セフェム系)を使用する。痂皮が完全に消失するまで治療する。全身療法(内服薬)を併用するのが一般的である。なお接触をおそれて患部を被覆することは必要に見えるが、治癒機転を阻害することもある。 |
予防 | : | 皮膚の清潔を保つことが大切である。集団の場では病巣を有効な方法で覆う、プールや入浴は罹患者と伴にしないなどの注意も必要となる。 |
登園基準 | : | 炎症症状の強いもの、広範なものについては登園は不可とし、皮疹が乾燥しガーゼで覆っても悪化しなくなってから直接接触を避けるよう指導が必要である。 |
突発性発疹
病原体 | : | ヒトヘルペスウイルス6型など |
潜伏期間 | : | 約7~14日 |
感染経路 | : | 親や兄弟の唾液によって、主に経口または経気道的に感染する。初感染以後、生涯持続感染状態になって断続的にウイルス排泄される。 |
治療 | : | 対症療法のみ。合併症として髄膜炎、脳症、心筋炎などがあるが、非常に稀である。 |
登園基準 | : | 熱が下がれば可。 |
アタマジラミ
病原体 | : | アタマジラミ |
潜伏期間 | : | 卵は10日で幼虫、幼虫は8~10日で成虫。 |
感染経路 | : | 頭髪と頭髪の接触、クシ・タオル・寝具・帽子などの共有。 |
治療 | : | 幼虫・成虫の駆除専用医薬品としてスミスリンパウダー・スミスリンLシャンプーがある。卵は10日でふ化するので3日に1度、3回~4回繰り返すことが必要。またシラミ駆除専用櫛で虫体や虫卵を除去する。頭髪は短くした方が駆除し易い。シーツ・枕カバー・帽子などは洗濯前に60℃以上のお湯に5分以上浸ける。発見したら一斉に駆除することが大切。 |
予防 | : | 手洗いの励行、爪をこまめに切る、毎日入浴し下着をこまめに取り換える、部屋の掃除の後室内に日光を取り入れる、布団や洗濯物は日向に干す。 |
登園基準 | : | 治療を開始すれば登園に制限はない。 |