センターニュース かわら版
労働時間の通算の原則的な考え方及びその方法
「2024年4月の医師の時間外労働上限規制」施行後3か月が経過しましたが、同じ時期に、医療機関が届け出る36協定届の様式が新しくなり、更に「労働条件明示のルール」が変更になりました。
労務管理の実務を担う皆様方においては、御苦労が多いことと思います。
さて、医療機関においては、大学病院から派遣される医師等、兼業の先生も多いと思われますが、今回、改めて、労働時間の通算の原則的な考え方及びその方法を以下で御説明いたします。
原則的な労働時間通算の考え方
使用者は、副業・兼業に伴う労務管理を適切に行うため、副業・兼業の有無・内容を確認するための仕組みを設けておくことが望まれます。(例:届出制など)
労働時間通算の原則的な方法
- 使用者は、自らの事業場における労働時間制度を基に、自らの事業場における労働時間と、労働者からの申告等により把握した他の使用者の事業場における労働時間とを通算します。
- 労働時間の通算は、原則的には以下の手順で行います。
手順①:所定労働時間の通算 ⇒ 先に契約をした方から、後に契約をした方の順に通算
手順②:所定外労働時間の通算 ⇒ 実際に所定外労働が行われる順に通算
- 通算の結果、1週40時間、1日8時間を超える労働(法定外労働)に該当する場合、36協定による労働時間の延長や、割増賃金の支払いが必要です。
[イメージ図] 副業・兼業時における原則的な労働時間通算の考え方
使用者A(先契約・先労働):①所定労働時間3時間、③所定外労働3時間
使用者B(後契約・後労働):②所定労働時間3時間、④所定外労働2時間 とした場合
原則どおりに①~④の順で足し合わせると(合計11時間)
- ③のうちの1時間と④の2時間の合計3時間が法定外労働(1日8時間を超える労働)に該当
- AとBはそれぞれ、36協定の締結、届出、割増賃金の支払いを行う必要あり
- 他の事業場での労働時間について、労働者からの申告等がなかった場合には労働時間の通算は不要ですが、適切な労務管理のため、労働者が自己申告等をしやすい環境づくりに努めてください。
- 兼業の場合の労災保険の給付額の算定方法は、すべての就業先の賃金額の合計が基礎になります。
雇用保険については、原則として、一つの事業場のみで、複数の事業場で働く労働者であっても、各々の事業場で1週間の労働時間が20時間未満の場合は、雇用保険の被保険者になることはできません。
医療労務管理アドバイザー / 社会保険労務士
永見 達彦
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