労働契約法3(三重医報 第688号掲載)

 本号では労働契約法に示された労働契約の5原則の内の「労働契約締結・変更の際のワークライフバランス(WLB)配慮」について考えてみます。

 労働契約法3条3項には「労働者及び使用者が仕事と生活の調和に配慮しつつ労働契約を締結・変更すべきもの」と、労働契約の基本的な理念を定めているもので、具体的に労働時間・仕事の量を斉一的に決めているものではなく、使用者に対しては労働者が仕事と生活を両立できる労働条件を事情に応じて整備するよう求めていて、政府が進めている「働き方改革実行計画」も、労働人口減少進行等への対応策としての労働参加率向上・仕事へのモチベーション保持のためにもWLB配慮を基本的考え方として示しています。
 具体例としては、労働基準法に労働者が賃金収入を得ながら自由な目的で勤務を休むことができる「年次有給休暇」の義務規定がありますが、その他にボランティア参加や自己研鑽・記念日等の「特別休暇制度」を設けていることや、育児や介護事情のある職員に育児介護休業法に定める休業・短時間勤務・時間外労働減免等の基準より高い支援処遇等があればWLB配慮のある職場との評価を高め、業務集中力向上、職員の確保・定着にも資するものと思います。
 県内医療機関ご訪問の際に、必要職員の確保困難な状況をよくお聞きしますが、厚生労働省の「医師の働き方改革検討会」の調査結果では女性医師が職場に復帰できない理由は「出産・子育て」事情が最も多く、働き続けるには「仕事と生活が両立できる多様な働き方・子育て支援」が要望されており、男性も含めて「育児・家族介護等の事情」にも対応できる多様な勤務の仕組み作りを進めれば、現在、医療現場から離れている多数の潜在医療業務資格者からも職場復帰を希望していただける効果があるのではないかと思います。

 長時間の労働は、ワークスタイルへの影響と共に、職員自身の健康障害・職務集中力低下の要因ともなるものですが、総務省の調査では1週間の労働が60時間を超える労働者の割合は全職種の中で「医師」がトップと把握されていて、医師の診療応召義務の問題はありますがWLBの観点からの「働き方改善・工夫」の取組をお願いいたします。

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