本年6月に国会を通過した「働き方改革関係法の改正」は、ほぼ5年を掛けて逐次施行されることになっていますが、8月から説明してきました「時間外労働上限規制・長時間労働抑制・労働者の健康管理措置強化」に続いて平成31年4月1日施行分の最後に「産業医の活動環境整備」について説明いたします。
産業医の選任は労働安全衛生法(以後、安衛法)13条に「50人以上の労働者規模」の事業場の義務として労働者の健康管理等の事項を行うこととされていて、産業医になる者の資格も定められていますが、労働者の働き過ぎを防ぐ・健康を守ることを目的とする今回の「働き方改革」では、事業者から産業医への情報提供や事業場の衛生委員会との関係を強化する法改正がされました。
一つには、労働者の健康確保のための事業者への勧告を行う産業医の職務の推進強化(安衛法13条3項改正)を保障するために、事業者は産業医に対して「労働者の労働時間に関する情報・その他産業医が職務遂行に必要な情報」を提供しなければならないことになりました。
その他の情報は省令(規則14条の2)において「ストレスチェック・長時間労働での医師面接指導結果・措置状況」「1か月80時間超の時間外労働情報」の他「産業医が必要として求める情報」とされています。
もう一点は、これらの職務を推進するにあたっての権限を産業医に与えなければならない(規則14条の4)ことに関して具体的には、産業医は「事業者・総括安全衛生管理者に対して意見を述べる」「健康管理に関する必要な情報を労働者から収集する」「緊急時には労働者に対しての必要な措置をする」権限が新たに規定(同条2項)されました。
産業医資格者の方々は当然に安衛法改正によって権限強化と共に職務への誠実性が高く求められることになったことに関しましては職務の重大性を改めて感じておられることと思っていますが、医療事業経営者の立場の皆さまが、職場の健康管理の中心的役割を果たされる産業医の職務推進に今まで以上のご理解をお示しいただき、医療従事者の健康保持増進の面での勤務環境改善取組を推進していただきますようお願いいたします。
「公正な待遇に関する法改正」の施行は再来年以降となりますので関係記事は来年といたしまして「働き方改革」記事は今回で中締めとさせていただきます。