医師の研鑽1(三重医報 第707号掲載)

 本年7月1日付け厚生労働省労働基準局長通達に関して、先月は「宿日直」を取上げましたが今月は「医師の研鑽」の労働時間取扱いについて説明いたします。

 通達は“医師については、自らの知識の習得や技能の向上を図る研鑽を行う時間が労働時間であるか判然としない”との意見も出た『医師の働き方改革に関する検討会(厚生労働省設置)』からの「労働に該当しない研鑽を適切に取り扱うための手続きを示すことが重要」との報告書(本年3月)を踏まえ、労働は労働者の行為が使用者の指揮命令下において行われるもの」との従来からの判断基準を変更するものではないとしたうえでの労働時間についての行政解釈を示したもので、各取扱いの基準は以下のとおりですので参考にしてください。

  1. 所定勤務時間内に、勤務場所での自己研鑽は労働時間となる。
    (筆者註 診療等の本来業務と直接関連のない学習・研修→上司の黙示の指示・黙認と判じ、一般に労働時間として取り扱われていると思います)
  2. 所定勤務時間外に、診療等の本来業務と直接の関連性なく行う研鑽(診療ガイドライン、新治療法・新薬の勉強等)は、業務の指揮命令をする者(上司)の指示(黙示を含む)なく行われる限り一般に労働時間に該当しない。
    (上司の指示あるときは、本来業務と関連ない研鑽でも時間外労働時間)
  3. 所定勤務時間外に、診療準備・後処理として不可欠なものとして行う「手術・処置等についての予習・振り返り」「シミュレーターでの手技練習」等は、上司の指示がない場合であっても時間外労働時間となる。
  4. 所定勤務時間外の、博士の学位・専門医取得のための研究・論文作成等は、上司・先輩等からの奨励があっても一般に労働時間に該当しない。
    (就業規則等に資格取得努力義務規定がある、研鑽が業務上必須である等であれば時間外労働時間に該当する。)
  5. 所定勤務時間外に、手術・処置等の見学を行うことは、手技等の向上のためであっても、業務上必須でなく、上司の指示なき場合は一般的に労働時間に該当しない。

* 各医療機関での「規定・手続き整備」等について次号で説明いたします。
* 通達は、インターネットいきサポに掲載されていますので確認のうえ、適正な取扱いをお願いいたします。
  ご質問等がありましたらセンターへ

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