医師の時間外労働については、労基法改正により令和6年4月1日から「限度時間は原則年間960時間」となり、地域医療確保や医師の集中的技能向上の事情による特例では「特定労務管理対象機関として県知事からの指定を条件に年間1860時間まで」の延長が認められることになっています。
労基法に定める一般労働者(医療分野の勤務医師以外の職務者を含む)の時間外労働の限度は、年間360時間を原則限度時間として、緊急時の特別事情があるときは年間720時間まで延長できることになっていることと比較すると、高齢社会が進む日本の状況の中で国民の命・健康を守る職務の重要性を踏まえての法律基準ではあるものの、労務管理の面からは長時間労働となる医師の健康確保対策の推進は重要な課題であるとご認識いただきたいと思います。
労基法による労働時間に関する規定では、健康障害要素の低い労働負荷の少ない業務(監視・断続的労働といいます)について、所轄労基署長の許可を得ることを条件として規制の適用が除外(法41条3項=労働時間としてカウントしない)されていて、医療分野の業務では宿直・日直が該当しますので、今般の医師の時間外労働上限時間規制に関連して「医師、看護師等の宿日直許可基準について(令和元年7月1日行政通達)」に示される「病棟の定時巡視等の軽易な業務従事等」の条件クリアーが必要ですが、医師の労働時間の適切な管理の観点からも労基署長への許可申請を本誌(本年6月号)でもお勧めしております。
許可申請は、労基法施行規則において「本来の業務とは別に宿日直勤務」の場合と、「宿日直勤務を本来の業務」とする場合で手続きが異なりますので、従来、「自院で通常勤務をする医師が、所定勤務以外に宿日直」の場合の「断続的な宿直又は日直勤務許可申請書(様式10号)」での手続きを中心に説明等をしてきましたが、大学病院・地域医療支援病院等に勤務する医師の副業勤務における宿日直(副業勤務先医療機関では本来の業務として雇用契約)の場合の監視・断続労働の許可を、前記の様式10号での手続きによって取り扱う旨の厚労省労基局長通達(令和3年2月18日基発0218第2号→インターネット検索可)が出されました。
一般的には、医師の宿日直勤務においては頻度の低い軽度の監視業務に止まらず、時間外・深夜労働と管理すべき救急診療対応等が問題とされて断続労働不許可となることも多くありますが、医療機関全体としては夜間の救急対応があるとしても、その部署・診療科以外での「通常、定期回診のみの業務、長時間仮眠」等が常態の宿日直勤務がある医療機関におかれましては、今般の取扱い変更を機会に宿日直許可申請取組をご検討いただければ如何でしょうか、情報提供が遅くなりましたが、ご案内申し上げます。
文責 労務管理アドバイザー 加藤三郎
医師の「断続的な宿直又は日直勤務許可申請」をお考えのときは、電話・FAX・メールにて当センターあてお問い合わせください。参考資料をご提供いたします。